都筑×密
HP5周年記念 昼寝スペシャル |
高柳 悠
「ひっそかー、あっそびにきったよーvv」 渡されている合鍵を使って玄関を開けた都筑は、中に向かって嬉しそうに声を上げる。 実際合鍵を使う時は嬉しくてしょうがない。 これは密からの信頼の証だから。 嬉しいから、密が在宅していると知っていてもインターフォンを押さずに、鍵を開ける。 「ひそかぁーーーっ」 いつもなら、都筑の声に顔を見せる密が呼んでも出てこない。 都筑は呼ぶのをやめて、勝手に上がりこむ。 気をつけたのは、音を出さないこと。 靴をそぉーっとそろえて、そろそろとリビングへ向かう。 日当たりのいいリビングは午後の日差しをやんわりと受けて、柔らかい。 床に来る途中で買って来たお菓子と飲み物を置くと、都筑はその日差しを受けて暖かいリビングの、一番一等席にいる存在に足を向けた。 最初は触感が気持ち悪いと嫌がった新繊維で出来ているクッションを背もたれにして、都筑の呼びかけに答えなかった部屋の主はぐっすりと眠っていた。 慣れると妙に手放せなくなったらしいクッションは、最初買った小さなものから密の身体を支えられるくらい大きなものも追加された。 それに沈み込んで、暖かな日差しを浴びて、お気に入りの紅茶をマグカップいっぱいに入れるというちょっと紅茶道からは外れる方法で手元に置いて、読書をしていたたが、ぽかぽかの日差しに耐え切れず寝てしまったという具合だろう。 半分ほどに減ったマグカップは床にぽつんと置いたままで、分厚い叢書の本は密の胸に開いたままだ。 重そうな本をそっとどかしても密は目を覚まさない。 可愛い顔して眠っているのを妨げたくはないが、このまま一人でほうっておかれるのもつまらない。 「あ、そうだ」 小さく呟くと、密が特大クッションを購入する時に嫌がるのを拝み倒して一緒に購入した、色違いのお揃い。 無理やり密の家に置いてあるのは、こういう時のため。 マグカップをキッチンの流しに持っていってスペースを作り、クッションを仲良く並べてなるべくくっ付ける。 ぽすんと身体を預けると、クッションは独特の感触で都筑の身体を受け止めた。 投げ出されていた密の手を握って、都筑も柔らかい日差しを体中に受け止める。 「なるほど、これは眠くなる」 実感した時にはすでにあくびが出そうな気持ちよさだ。 目覚めた時、密はびっくりするかな?と楽しい気持ちになりながら、都筑は一緒に昼寝を楽しむことにした。
END |