騎乗位
都筑×密
HP二周年 騎乗位スペシャル |
高柳 悠
死神の仕事はあまり後味がいいものではないものが多いが、今回の仕事は体力的にも精神的にもかなり来るものがあって、密は疲れきっていた。 それは都筑も同じらしく、ほとんど口をきかない。 密より繊細な面を見せるときもある都筑のダメージの方が今回は大きいと密は思っているので、自分の家に帰らず密についてきたことも咎めず招き入れた。 長く空けていたから冷蔵庫にはめぼしい物はなく、冷凍食品をレンジでチンするだけの簡単なもので食事をすませて、先に風呂に入れた。 普段だったら 「密も一緒に入ろうよー」 とか恥ずかしいことを平気で言うのに、大人しく誘導されて風呂場に消えた。 風呂に入っている間に用意して置いておいたパジャマを着込んで出てきた都筑に、ビールを渡してやる。 こんなもんじゃ酔えないだろうけど、無いよりはましだろう。 ちょっと笑って受け取った都筑に 「すぐ寝ろよ」 と忠告して、密は風呂に向かった。 熱いシャワーを全身に浴びて、随分長いことそうしていたかもしれない。 シャワーがマッサージのようで、とても心地よかった。 ぼーっとそうしていると、疲れているのが実感としてよく分かる。明日からしばらく休暇を貰えているので、それが救いだ。 ほてった身体の水気をふき取って、白いパジャマを着込む。 寝室に行くと、密の言葉を守ったのか都筑がベットに入って寝息を立てていた。 一緒のベットで寝るようになって、密より先に寝てしまうなんてなかったことで、都筑の疲労が伺えた。 密は眠りを妨げないように、そぉっと近づくと、自分も寝てしまおうをベットに入ろうと思った。 が、困って立ち尽くした。 都筑がベットの端を陣取ってしまっているので、空いているスペースは都筑を乗り越えた向こう側しかないのである。 熟睡している都筑を起こすのは可愛そうだし、だからといって自分が別のところで寝るのは嫌だし、そんなところもこの家にはない。 仕方なしに密は都筑を乗り越えることにした。 起こさないようにゆっくりとベットの端に膝をつく。 細心の注意をしていても重みがかかった分だけ、どうしても沈んでしまう。 思わず舌打ちしそうになるのを、慌てて止めて、いっそう慎重にことを進めた。 都筑の身体のぎりぎりに膝をつく。 腰のあたりに膝を詰めたのは、そこが一番越えやすそうだったからだ。 一点に体重がかからないように、都筑の身体の脇に片手をついてバランスをとりながらゆっくりと片足を向こう側に下ろす。 あまり振動なく出来たと自己満足しながら、残してきた足をこちら側にもってこようと行動を起こそうとしたとき、都筑と視線がばっちり合った。 寝ているものだとばかり思っていたので、密の身体はかっちり固まってしまう。 都筑も完全に起きてはいないらしく、やけにぼんやりとした瞳だ。 「・・・・・・密、やらしー」 これまたぼんやりした声で言われる。 「な、何がやらしー、だよっ」 「だって・・・・騎乗位」 「は?」 言われて自分の体制を顧みる。 都筑の腰を跨いでいる、この体制。 なるべく触れないようにと移動したけど、膝で超えようをしたため結構密着している。 「・・・・ぁ」 小さく声をあげて、夜目にも密は赤く染まる。 都筑は膝を曲げて密の背中を軽く押した。 押されて密は都筑の上に倒れこむ。 それを受け止めて、都筑はにっこり笑った。 どうやら覚醒したらしく、さきまでのぼんやりした気配はない。 「明日から休暇でよかたったね」 かわりに濃厚な気配が立ちこめていた。 END
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