らぶらぶ?

 

高柳 悠     

俺たちは「らぶらぶ」何だそうだ。

都筑は誰かからそう言われるたびに

「そうでーす。らぶらぶでーーす」

とか何とか言いながら、抱きついてきたりする。とっても嬉しそうに。

俺はというと、そんな都筑を邪険に振り払いながら

「そんなんじゃないです!」

と否定する。

「密ったら照れなくてもいいのにーーー」

なおも懐く都筑に猫パンチを食らわしたりすると、余計に「らぶらぶ」だと思われたりする。

経験値の低い俺は、自分たちのどの辺が「らぶらぶ」なのかが、さっぱり分からない。

巽さんからも言われた時は、ちょっと真面目に質問してしまいそうだった。

 

       いったいどの辺りが「らぶらぶ」なんですか?

 

さすがに言わなかったけど。

未だによくその辺りが分からないけど、こういうのが「らぶらぶ?」なのかな?と思えることは気が付くようになった。

 

たとえば、今みたいに。

 

「密ったら!びしょぬれじゃないか!?」

図書館に行って、物色してきた帰り道で雨に降られた。

本は懐深くしまいこんで死守したけど、服や髪の毛が濡れてしまったのは仕方がないだろう。

夕刻分かれた筈の自分の家には帰らずに真っ直ぐ密の家にきたらしい。

合鍵を使って何時ものように勝手に上がりこんでいたが、帰ってきた密の格好を見て慌ててタオル掴んで出迎えた。

ふかふかのタオルで髪を拭いてくれていた手が、両頬を押し包む。

「ああ、こんなに冷えちゃって・・・・・・密、お風呂入っちゃいな。俺がさっき入ったばかりだから、暖まってるよ」

よく見なくても、すでにパジャマ姿の都筑。

誰の家だ?と言う前に風呂場に押し込まれる。

確かに寒かったので、素直に言う事を聞いた。

暖まって出てくると、密のパジャマがちゃんと脱衣所に用意してあった。

ダイニングに行くと、紅茶の良い薫り。

「あったまった?」

密を椅子に座らせて、たっぷりミルクを入れた紅茶を前に出してくれる。

そして、肩にかかっているタオルを取ると、ゆっくりとまだ濡れたままの髪の水分をとってくれる。

「ちゃんと拭かないと。せっかく暖まったのに、また冷えちゃうよ」

優しく優しく撫でる感触が気持ちよくて、うっとりと目を閉じてしまった。

ぽかぽかで、とっても気持ちが良い。

何時の間にかカップと取り上げられて、後からやんわりと抱きしめられ、耳の後にキスが落ちてくる。

自然と上向きになった密の唇に、羽のようなキスが繰り返される。

うっとりと目を開くと、愛しそうに見つめてくる瞳と視線がかち合う。

「・・・・風邪引かないように、もう寝ちゃおうか?」

手を引かれて、立ち上がる。

適温に暖められた、寝室。

いつのまにかダブルサイズに変わっていたベット。

その中で都筑に抱きしめられたまま眠りにつこうとしている、この状態は、やっぱり「らぶらぶ」なのだろうか?

 

END