過去と未来と現在と

高柳 悠    

生きていたときは、あまり良い思い出が無い。

両親から愛させた記憶もないし、その他の親戚からも可愛がってもらったことも無い。

なんの為に生まれたのが分からない人生を、それでも愛されようと必死になって、裏切られながらも、理不尽とか恨みとか全然思いもしないで、結局愛されないまま死ぬこととなった。

死に方も、呪殺。

最後の瞬間まで、細胞の一つ残らずが苦しみに悲鳴を上げていた。

愛されてなくても、奇病と蔑まれながらも、黒崎家の唯一の跡取として治療は最善を尽くされていた。

血を絶やしていまうことを恐れて生きろと言ってくれたことが、それでも嬉しかったなんて、何て灰色な人生だったろう。

死んでしまうことが、両親への復讐だったのかもしれない。

何も無かった人生への、抵抗だったのかもしれない。

実際あの時は、死んだ方がマシだと思ってたし、マシだった。

楽になって、生きていた頃には忌嫌われた能力のおかげで死神にスカウトされて、自分の死に方に不信な点があったと分かって、呪殺だと知った。

張本人に会って、直前に何があったか思い出して、絶対殺してやると思った。

今だって、思っている。

ちょっと違うのは、殺してやるではなく決着をつけてやる、と思っていること。

16歳で死んで、16年間良い思い出が無くて、死神になって・・・。

ずっとずっと寂しくて悲しくて、でも誰にもいえないで、ひとりで死んで知って恨んだ。

でも、死んでから色んなことを知った。

寂しいって思うと、抱きしめてくれた。

悲しいって感じると、一緒に泣いてくれた。

恨んだ心を、悲しい目で見てくれた。

いつもいつも傍にいてくれた。

だから、ちょっとだけ変わることが出来たと思う。

思い出したくも無い思い出を、こうして思い出せるくらいには。

両親のことを考えることが出来るくらいには。

あいつのことを恨みに任せて殺すのではなく、死神として対峙出来るくらいには。

 

すべては、今、俺の隣で太平お気楽に寝こけている、お気楽ご気楽とんぼの所為だと思うと・・・・・・・・・。

少ししゃくだけど。

 

END