HP開設記念キススペシャル |
高柳 悠
わくわくと胸躍らせている男の前で、密はひたすら困っていた。 目の前の男・都筑は密がキスをしてくれると知って、もう大騒ぎで駆けつけてきて、その喜びを盛大に語り尽くした後、こうやってその瞬間を心ときめかせて待っているというわけだ。 「と、とりあえず座れ」 緊張で密の声も強張ってしまう。 言われて忠犬のように従順にそばの椅子に座った都筑は、座ったことで目線が上になった密を期待を込めて見つめている。 もうすでに、はっきり言って逃げ出したい密だけど、この状態で逃げ出すと都筑は絶対暴れる。 とにかく一発ちょっと軽くかまして、さっさと逃げよう、と考えてはいるのだが、やっぱり恥ずかしい。 「密」 見上げる視線がちょっと焦れてきている。 「うっ」 「密ぁ」 「・・・・・・・・」 とにかく覚悟を決める。 恥ずかしいけど、嫌なわけではない。一応そういう関係だという認識はちゃんともっているのだ。 「・・・・・目、閉じろ」 大人しく目が閉じられる。 ちょっと上向き加減の都筑に、そっと顔を寄せる。 心臓が破裂しそうにドキドキしている。こんなに近くにいたら、都筑に聞こえてしまうのではないかと、よけいに恥ずかしい。 本当に本当に触れるだけの、掠めるようなキスを都筑に送った時はもう緊張も限界でくらくらして倒れそうだった。 キスの寸前で自分も目を瞑ってしまった密は平衡感覚をなくしかけて、あわてて目を開ける。 途端に都筑とばっちし視線があって、顔がゆでだこのように真っ赤に変わる。 「お、お前っ、目閉じろっていったじゃないか?!」 「だってー、密の顔見てたかったんだもーん」 へへっ、なんて笑われて、緊張の糸の限界を超えた密の体がくったりと都筑に倒れこむ。 それをこともなげに抱きとめて、ぎゅっと抱きしめて都筑はこれ以上もなく幸せそうだった。
END |