尚隆×六太

HP5周年記念 昼寝スペシャル

高柳 悠

午後の政務の時間になっても執務室に戻ってこなかった王を探して宮殿内はもとより庭園まで探し回った朱衡は、庭園の隅に設けられた東屋でようやく尚隆を見つけた。

「・・・・何やってんですか?」

本来この台詞は「午後の政務をサボって何をやっているのですか?」という意味で発せられるべきものだったが、そうはならず尚隆の今の状態に対しての疑問として発せられることとなった。

「うーん、牀榻かな?」

尚隆は少し考えてから、そんな風に答えた。

「・・・・牀榻ですか・・・間違いではないようですが」

朱衡は何とも言えない様子だ。

「・・・・で、どうするんです?」

「どうすればいいと思う?」

朱衡の質問に、尚隆は質問で答える

実際、ちょっと困っていたのだ。

聞かれて朱衡も困り顔だ。

尚隆の上にうつ伏せになって、のんきに昼寝している六太は一向に起きる気配がない。

起きている時はあれだが、寝ている時は文句無く可愛らしいのだ。

王以下諸官はまず、起こしてしまっては可哀想、と思う。

これは延州国官吏の深層心理であり、古参になるほど根深い。

普段ビシバシ苦言を述べる朱衡も例外ではないのだ。

「とりあえず、部屋へ連れて行きましょう」

だから主上は執務室へ、と言おうとした朱衡は尚隆が無言で指差す方向へ視線をやる。

そこにはしっかりと尚隆の着衣を握り締めている六太の手がある。

もう片方も同じような状態だ。

これでは引き剥がすことは無理だろう。

「な、どうすればいいと思う?」

尚隆の表情は確信犯的で、朱衡は当然むっとしたが、こればかりは仕方がない。

せっぱ詰まった政務があればまた別だが、今は特段急を要するものはない。

「分かりました。牀榻のお役目をしっかりと務めてください」

両手を挙げて降参の意を表した朱衡は、言い渡すと東屋を後にした。

まだ探し回っている惟端や他の官に、午後の政務に主上は不在の知らせを出さないといけない。

それに、台輔もだ。

ついでに、東屋には近づかないよう指示を出しておこう、と思う自分はかなり甘いと朱衡は一人苦笑いを漏らした。

 

END