たまにはそんなこともある
高柳 悠
めずらしく二人で姿を現した主従に、朝議に参加した者達はどよめきを隠せなかった。 朝議に二人とも揃ったことも驚きだが、登場の仕方がまた、驚きだった。 麒麟六太を抱き上げて、の登場だ。 女官に綺麗に飾り立てられ黙っていれば可愛らしいお人形のような六太を、左腕に据わらせるように抱き上げている。 六太の右手は尚隆の肩口に乗せられ、一対として絵になっている。 動揺が走る官の間をどうどうと横切って、まず六太を所定の椅子に下ろすと、自分の席である玉座に腰を下ろす。 そのまま何事もなかったかのように議題を処理して、少々落ち着かない様子ながら朝議は無事終了した。 本日二度目のどよめきは、朝議が終わり王の退場の時に起こった。 尚隆は玉座から立ち上がると、六太のところへ行き、ひょいと抱き上げると登場してきた時のように、退場していった。 後に残されたのは唖然とした官達の間抜けな顔だけ。
尚隆はその後、朝食をとる時も執務室へ行くときも同様に、六太を抱えて登場した。 六太の執務室は別にちゃんとあるが、尚隆の執務室で仕事をこなすことも多いので、執務室に六太が一日いることは珍しいことではない。 が、今日はやっぱり異常だ。 「・・・・どうしたんですか?いったい・・・」 午後、ようやくこの質問をしたのは朱衡である。 他のものは、どう突っ込んでいいのか不明で、対処不能のようだ。 なにせ、ちょっと移動するときですら、尚隆は六太を抱き上げる。 本日、六太が歩いている姿を見たものはいない。 「あなた方が、こんなにべったりしているなんて」 一部では六太は実は失道していて、ごまかすために尚隆がつれ回している等という怪情報まで流れている。 さすがにそれは笑い話的なものだが、諸官がある意味不気味に感じているのは事実だろう。 「どうしたって言われてもなぁ」 尚隆は六太の顔を見てから、うーんと考える。 六太は知らん顔している。 どうせ、自分は付き合っているだけだ。 そう、それだけ。 でも、嬉しいお付き合い。 困っている尚隆はなおも考えた後で、こう言った。 「そういう気分だったから」
六太、今日は一日一緒にいよう。 じゃぁ、抱っこしてけ。
「そいういうこともある、ということだな」
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くだらねー・・・(その2)