尚隆×六太
HP三周年 手スペシャル |
高柳 悠
「ほら」 差し出された手は、大きくて暖かいことを六太は良く知っている。 でも素直になれないときも多々あって、六太はフンっと顔を背けた。 何故素直になれないかと言うと、昨日は尚隆にまんまと置いていかれたからだ。 ようやく祭りを開くとことが出来るくらいに復興したが、まだ安定とはいえないため六太は街に下りることを許可されなかった。 駄々をこねてようやく尚隆と一緒なら、というお許しを貰って尚隆の部屋にお誘いに向かったが、そこはすでに無人だった。 二連ちゃんなどもってのほかだ!と惟端には喚かれたが、祭りに行けなかった六太が泣き落として、こうやって連れてきてもらったのだ。 が、昨日の恨みは晴れやしない。 「せっかくの祭りなんだから、そんなにぶうたれた顔をしているな」 呆れた尚隆が腕組をして見下ろしてくるが、顔どころか身体ごとそっぽを向いてご機嫌斜めをアピールする。 「じゃぁ、帰るか?」 「やだっ」 そんなに怒っていてはつまらなかろう、尚隆は呆れてため息をついた。 さすがにもてあまし気味だが、置いていったら朱衡達に後で殺されるだろう。 それよりも、さすがに一人でこんなところに置いていく訳にはいかない。 ツンツンしてても、やっぱり六太は大事にされてきた者のもつ匂いがある。見目も良いから格好のカモだ。 この混雑ではぐれない為には、どうしても手をつなぐ必要がある。 「六太、いい加減にしろっ」 強めの口調で六太の小さな手を掴んだ。 が、すごい勢いで振りほどかれた。 これにはさすがに尚隆もカチンときて、六太に背を向けた。 賑わっている祭りのど真ん中で、二人はお互いに背を向けてそれでいて相手を意識して探り合っている。 立ち止まったままの二人は往来の邪魔でたびたび道行く人にぶつかったが、体格の差か六太が何度目かによろめいた。 ほろ酔いの男が剣呑な目で六太を見下ろしてきたが、鋭い視線を感じて顔を上げ尚隆の存在を知って慌ててその場を立ち去る。 「ほら」 頼むから、と尚隆は再度手を差し出した。 「六太」 名前を呼ぶと、微かに肩が震える。 天邪鬼だから、折れる機会を見つけられなくて内心びくびくしていたのだろうと分かる。 今度は根気よく、待った。 随分長い時間がたったころ、ようやく六太が動いた。 「こんなにでかい手、にぎり辛い」 そう言って、尚隆の小指と薬指を六太の手が握った。 触れた手は、やっぱり暖かかった。
END |
・・・・ちょっと前に書いた「てのひら」とダブっている気がする・・・・・
すいません
好きなんだよー、手をつないでるの