パパパパパジャマ!
〜十二国記バージョン〜
高柳 悠
「・・・・・何?・・これ??」 尚隆が持ってきた布の塊の端を摘んで、六太は眉をひそめた。 たぶんそんなに警戒するような代物ではないのだろうが、持ってきたのは尚隆で、尚隆に渡したのは仲良しの海客だという。 こいつがたまに尚隆に教える知識は、六太にとって迷惑この上ない。 今回も碌なもんじゃないだろう、と斜めに構えても仕方がないということだ。 布の塊を広げると、それが着る物だということは、分かった。 蓬莱へ行くと、色形は違うけれど同じ系統の物をたくさんの人が着ている。 ただそれよりは、ちょっと薄くて頼りない。 「そいつはな、パジャマというものだそうだ」 心もちふんぞり返って偉そうに、尚隆が訓示をたれる。 夜寝るときに着るための物だということだが・・・・・。 「あいつ、これ、どうしたの?」 仕事帰りにこっちに流れたと聞いていたから、寝るときの着物を持っていたとは思えない。 「自分で作ったらしい」 何でも寝相が悪くて、こっちの寝巻では朝を迎える頃には素っ裸で風邪を引いてしまうらしい。 それで自分で着慣れた蓬莱風の寝巻を作ったというのだから、器用なものだ。 「で?」 説明終了。 それでどうしたいのか? これからが問題なので、六太は尚隆に負けないくらいふんぞり返る。 「六ちゃん、着てみない?」 途端に猫なで声で、尚隆がにっこりとする。 思わず腰が引けるのを踏みとどまる。 「何で?俺は別に寝相は悪くないぞっ」 「嘘だ」 軽めの拒否を間髪いれずに否定されて、速攻で足蹴りを入れたがこれまた失敗。 簡単に捕まって、六太は座っていた牀榻の端から中ほどにポイッと投げ出された。 「・・・・・素っ裸にはならないもん」 胡坐をかいて、座りなおして、小声で口答えして、そっぽを向く。 まぁ、確かにはだける程度だ。 たまに素っ裸になるけど、それは尚隆が率先して脱がしている時だし。 「まぁまぁ、とりあえず着てみろ、なっ、六太」 ご機嫌斜めになってしまった六太を腕の中に抱きしめて、まろい頬にキスをする。 尚隆を押しのけながら、六太は胡散臭そうな目つきで尚隆を見る。 「なーんか、仕掛けないだろうなぁ」 着た途端ばらばらになるとか。 よからぬ薬が染み込ませてあるとか。 猜疑心いっぱいの六太に、さわやかな笑顔で大丈夫と太鼓判を押しながら、尚隆は六太の包を勝手に解き始めた。 「わっ、馬鹿っ、分かったーーー分かったってば!」 脱がされてはたまったもんじゃないので、観念して着ることを承諾する。 俺が着せてやる、とか言い出すかと思ったが、尚隆はすんなりと六太を開放した。 くるっと後ろを向いてしまった六太にパジャマを渡す。 上だけ。 このパジャマには六太が心配しているようなタネも仕掛けもない。 尚隆はただ六太がこれを着たときの姿が見たいのだ。 ただし、上だけ。
『これのねー、上だけ着せるんすよ。上だけ!そうすっと、こう、ちょっとダボダボな上着の裾から生足が、こう・・・・・ってねー』
『でっでっ、そんでもってっ、下をっすね。彼氏が着ると・・・・ほーらラブラブ!俺これ量産して売り出そうっかなぁ』
わははははっと笑っている海客を拝み倒して貰ってきた一着だ。 こっちの寝巻は丈が長くて生足は拝めない。 裾から垣間見れる六太の生足。 顔がにやけるのを押しとどめるのに苦労していると、六太から声がかかった。 「着たぞー」 目を向けると確かにパジャマを着た六太がいる。 座ったままなので、生足は拝めない。 「六太、立ってみな」 内心ドキドキしながら、それを顔に出さずに六太に手をかしてやる。 大人しく手をとって六太は立ち上がった。 そして。 尚隆は無表情に固まった。 「これさー、でかいよ。手、出ないしー・・・・脱げそう」 確かにどうみても、でかい。 手はまったく袖から見えず。 脱げそう・・・というのは肩幅が全然あっていないので、ずるっとずれると上から落ちそうに感じるためだ。一番上のボタンが外れたら確実に落ちるだろう。 お気に召さなかった六太は、脱ぐぞー、とさっさと脱ぎ始めている。 尚隆は無表情のまま悲しんでいた。 大きすぎたパジャマは六太の足首まで包んでしまい、楽しみにしていた生足を完全に隠してしまっていた。 落胆はあまりにも大きい。 ずり落ちたパジャマから垣間見れた「生肩」もなかなかいい眺めだったが、やっぱり生足が見たかった!
尚隆の野望は尽きない・・・・・・。
END |
同タイトルで封殺鬼の方に小説を書いてて思いついたので
尚隆、馬鹿だなぁ(笑)
続いたら、笑って・・・。