EYES
高柳 悠
三日に一度。
朝議をそう定めたのは尚隆で、それなのに良くサボると官に不満をぶちまけられる。 またに出席すると、こうなる。 六太だってサボっているから、矛先をそこに向けると倍になって不満が降りかかってくる。 別に堪えてないので、次回はサボってやろうと、心に決めた。 そんなんだから、示し合わせもしないで、朝議で六太を顔を合わせるのは、本当に稀だ。 側近達も驚いてしまうほど、稀。 でも、これは実は怖いことだ。 サボりがたたって、引っ張り出されたのでもなく。 よっぽど暇で暇で仕方なく、気まぐれで「朝議に出ちゃおうかな」等と思ったのでもなく。 昼寝のまま寝つづけて、朝早くに起きてしまった、というのでもなく。 出ようとして朝議に出てきた六太は、怖い。 普段、麒麟としての性質そのままに、あーだこーだと煩く口を突っ込んでくる六太が、こういうときに限って何も言わない。 一言も口を挟まず、ただただ進行を見つめつづける。 台輔としての正装に身を包んで、微動だにせず進行を見守る。 ただただ、見守る。 そして結果を見定めて、静かに瞠目する。
朝議の終了を受けて、退出した廊下の先で六太が立っていた。 正装で姿勢良く立つ姿は、さすがに凛として高貴な立場を覗わせる。 だが、すれ違いざま尚隆の足を軽く蹴りつけて、にっと笑う顔は、先ほどとは打って変わって子供じみていた。 「かっこよかった」 並んで歩き出した尚隆の耳に、小さな六太の声。 嬉しそうな笑顔を見下ろして、内心、当たり前だと思う。 そう思ってもらえるように努力しているのだから。 六太はちっとも知らないのだろうけど。 何処までも見通してしまうあんな視線に晒されて、みっともない真似なんか出来る訳が無いだろう。 自分を信じて、知ろうとしている瞳。 あの視線に、応えるために尚隆はいるのだから。 あの笑顔のために、出来うる限りのことをする。 その笑顔が、明日へと続く笑顔であれば、といつも願っている。 そのためには何をすれば良いのか? いつも、考えている。
君の瞳に何が写っているのか、と。
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