ラブローション
尚隆×六太
HP一周年ラブローションスペシャル |
高柳 悠
夜もふけた頃、昼間から所在不明だった雁国国王・延王尚隆は安眠妨害という事実をまったく気にしないまま、六太の部屋へやってきた。 寝ている六太をたたき起こし、未だちゃんとは覚醒していない相手に向かって嬉々として持っていたものを見せつける。 「うーーーーー・・・・・・・・・・?」 くっつきそうになる目蓋を押し上げて、尚隆の持っているものを見てみると、それはこの国では作り出すことが出来ない技術で出来たものだった。 ぷらすちっく、という素材はたまーに流されてくる蓬莱の人々が持っていることがあるため、知ってはいたが王宮でもあまり見ることはない。 確かに大層珍しいものではある。 が、蓬莱へちょくちょく遊びに行く六太には別に騒ぐほどのものではなくて 「あ、・・・・・・っそう」 と返事をすると、すーーっと眠りに落ちていく。返事をしただけ立派なものだ。 だが、首がガクガクするほど揺すられて寝ていられるほど、図太い神経は持ち合わせていない。 「・・・・・何なんだよぉ・・・・・」 「これを見ろ!」 「・・・・ぷらすちっく、がどうかしたのかよ?」 「容器ではなくて、中身が問題なんだ」 ずいっと差し出された容器には、六太には理解出来ない絵だか文字だかが書いてある。 「らぶろーしょん、と読むんだそうだ」 「・・・・・文字なのか?」 「蓬莱からさらに遠くの国の文字らしい。一番新しく流されてきた蓬莱人と意気投合してな。そいつがくれたんだ」 「へーーーー」 「そいつは<そーぷらんど>というところで働いていたらしくて、そこから帰ろうと思ったら、ここへ流されたらしい。その時持っていたのがこれだ!」 「そーぷらんど、って何?」 「蓬莱の妓館みたいなものらしいな」 「・・・・・・・・・・・てめぇはどこでそいつに会ってたんだぁ?」 「妓館」 尚隆が答えた途端に、振り上げられた六太の足は軽々と尚隆に捕られられた。 「六太、行儀が悪い」 何でも尚隆が直々に仕事を世話してやったらしく、様子を見に行っていたらしいが、ついでに何をしているか分かったもんじゃない。 「妬くな、六太」 かーっと赤くなる顔を隠すようにそっぽを向いて、話をそらす。 「でっ!それがどーしたんだよっ」 「本当に話をしていただけだって。まぁ、相談みたいになったんだが、そうしたらいい物をもっているから、と言ってこれをくれたんだ」 らぶろーしょん、を。 自然と視線がその物体に流れる。 「イチゴ味らしいぞ」 「食い物なのか!?」 好物のイチゴの名前を出されて、俄然興味を持った六太はぱっと尚隆に向き直る。 瞳は期待にキラキラしている。 「いや、濡れ具合の良くない時に使う、挿入を手助けする代物。俺たちにはちょーどいいものだろう!」 ガッッ、という衝撃音が響いたのは尚隆が言い終わった直後だった。 自由だった六太の片足が、尚隆の顔面にクリーンヒット。 「お前は何の話をしてたんだーーーーーっ!!」 深夜の宮殿に響き渡った六太の声は、主従の喧嘩には慣れっこの雁国官達に無関心なまま聞き流された。
END
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