「欲望」 |
野獣のように這わせて、後ろから何度も貫いた。 すでに身体を支えていられなくなっていて、崩れた上半身を無視して引き上げた腰だけが淫らに差し出されている。 律動するたびに熱を孕んだ声があがり、それよりも大きく結合した下肢から濡れそぼった音が響く。 グシュ、という濡れた音。 角度を変えると、よりリアルに鼓膜を打った。 打ち据えながらも、汗ばんだ身体を余すこところなく両手が這いまわり、快感に震える肌に歯をたてた。 それすらも鋭敏になった肌は喜びと捕らえて、鳴き声をあげる。 シーツを掴んだ指が握られては開くという動作を繰り返している。じっとしていては大きすぎる感覚にとても耐えられないのだろう。 しなる背も、、揺れ動く腰も、張り詰めた下肢も、振られる髪も、飛び散る汗も、この行為がもたらす快感を伝える。 這いまわっていた手が、男としての一番の快楽を与える個所にたどり着く。 「ひっ・・・・ああぁ・・・・あっ・・」 するりと触っただけで、大きく背中が揺れた。 「や・・・め・・、あ・・・・・・・ふっ」 鈴口から零れる体液の量がぐっと増して、指にねっとりと絡まった。 根元で輪をつくって、ゆっくりゆっくりと押し出すように先に進める。 ゆっくり、ゆっくり。 搾り取るように。 「あっ、あっ」 先の張った個所でも緩めることをしないで、進んだ。 ぐっと増す体積。 「・・・あああっ!」 押し出させるような開放を放って、緊張の後、弛緩した身体がベットに崩れ落ちる。 高みに置かれていた腰も、支えられなければその場に留まることは出来なくて落ちた。 「んっ・・・」 中で威力を今だに保っていたものが抜け落ちる時、そんな刺激にも絶えられず声が漏れる。 「・・・イッたね」 まだ生暖かい体液を滴らせた指を投げ出された下肢に擦り付けるように這わせて、三吾が笑う 。 眞巳を責めていた時のままの膝立ちの体勢は、いまだ一度も開放を迎えてない己自身を主張させてりる。 気だるい身体をうつ伏せから仰向けに寝返りを何とか打って、三吾を見上げた眞巳は当然の状態を保っている熱を目の当たりにして怯えた表情を見せる。 だが、怯えだけではないのは濡れる瞳に見え隠れする快楽の残像が証明している。 「足、開いて」 眞巳の身体はすでに奥だけで達することが、出来る。 最奥に嵌められた時の快感に想像だけで、さっき達したものが勢いを取り戻しつつあった。 それでもまだ残る羞恥心に、下肢を自ら開きながらも、顔を反らす。 「・・・・・膝は折ってね」 優しい命令にビクリと肩が揺れる。それでも膝がゆっくりと上がって三吾の目の前に全てが奉げられた。 自分のものと三吾が滴らせた先張りしと潤滑剤とでびしょ濡れになった谷間の奥は、赤いすぼみとしていきずいている。 上の口が熱い息を吐き出すたびに、呼応するように微かな収縮を繰り替えす。さっきまで含まされていた貫くものを再び欲しているようで、取り込もうとした動きにも見える。 実際、欲しくて仕方がないのだろう。 反らされていた視線が、そこを見つめている。 曝け出すという恥ずかしい格好を取らせたままで、何もしてこない三吾に焦れた身体が時折ピクリと小さく跳ねる。 形のよい尻が、シーツに擦り付けられている。 「あっ・・」 思わず上がった嬌声は、中でとろけきって行き場所を探していた潤滑剤が、とうとう出口を見つけて漏れ出てきたのを感覚で知ったからだ。 クプッ。 微かな音だったが、三吾に耳には届いた。 視覚的は、赤い口が透明な液体を吐き出して閉じるのを、やけにスローモーションで捕らえていた。 液体にしては粘り気のあるそれが、ゆっくりと滴り落ちてシーツに流れ落ちる。 「・・・や・・んっ・・」 肌を這う一筋の流れに、身悶える。 「さ・・・・んごぉ・・・・・・・・」 舌っ足らずな発音で名前を呼ばれる。 普段だったら想像すら出来ないが、これも眞巳だ。 自分だけの、眞巳。 濡れた舌がチラリと垣間見れたあたりが、限界だった。 ゴクリと生唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえる。 「あああ、ああっ・・・・ひぁぁ」 壊しかねない勢いで、貫く。 なのに、貪欲に飲み込まれて、食いちぎられそうな感覚に歯を食いしばるはめになる。 めちゃくちゃに掻き回して、これでもかというくらいに突いた。 本能的に逃げを打つ身体を押さえ込んで、奥を狙う。 そうかと思えば、入り口を小刻みに揺らして物足りなさに涙ぐませる。 「・・・・いっ・・ぁ・・・さん・・・ごっ・・・・・ん、いいっ」 よがりながら、汗ですべる背に必死になってすがる、腕。 欲しくて、欲して貰って、それでも足りない、欲。 こうして繋がっていても、抱きしめられても、全然足りない。 「もうっ・・・・もっ・・・・・・」 もう駄目だ、と鳴き声が訴える。 一緒にイって、と。 「ふっ・・・・あっ・・・・ああああっーー」 「くっ」 後ろだけで最後までの開放を迎え、望みのまま三吾は最奥へ放つ。 まどろみの余韻の中で、思う。
足りない。 足りない。 足りない。 足りない。 まだ、足りない。
果てがない、「欲望」
END |