ガッツ×グリフィス
HP三周年 手スペシャル |
高柳 悠
日が落ちて、部屋の中にはゆらゆらと揺れる蝋燭が灯されて、頼りなげな光をかもし出していた。 その光を頼りに、グリフィスは報告書をまとめる為に机に向かっていた。 遠征からもどってきたのは、今日の夕刻で今頃仲間は酒場で馬鹿騒ぎだろう。グリフィスも誘われていたが、組織の一部となってしまった今となっては、そうもいかない。 ブーイングの仲間を置いて、こうして報告書を作成しているわけだ。 ガッツは、その横に座って机に頬杖をついた体勢で、それを眺めていた。 仲間と一緒に酒場に向かったのに、ついさっきひょっこりやって来て、そうしている。 ガッツは字が読めないので、つまらないだろうと思ったがガッツは面白いらしい。 グリフィスが書いている内容ではなくて、鳥の羽で作られたペンにインクがつけられて、紙の上で軽く動くとそこに黒く文字が現れるのが面白いのだそうだ。 仲間と飲んでいるほうが楽しいのではないかと思うが、ガッツがそばにいてくれるのは嬉しいので、グリフィスも何も言わない。 ペンの先が洋紙を引っかく音だけが、微かに響いてる。 グリフィスの白い指先がほんの僅かに動いてペンを操ると、文様のように文字が浮かび上がる。 ガッツには指先が醸し出す魔法のように見える。 戦いでは大胆かつ繊細な動きで敵を翻弄するこの手は、本来こんなふうに緩やかな動きの方があっている気がする。 自分の手なんてまめが固まってゴツゴツなのに、グリフィスの手は柔らかくて優しい。 その手が、一番柔らかくなる時間を思い出して、ガッツは1人で赤面した。 闇の中でさえ白いそれが縋りついて絡み付いてくる時、ペンを持つ清廉な手からは想像も出来ないほどの手淫でガッツを翻弄する、手。 いけないと思いつつ妄想に浸ってしまったガッツを現実に戻したのは、ペン先にインクをつけるために優雅に動いたグリフィスの手だった。 はっとして思わず背筋を伸ばしてしまったガッツに、グリフィスはプッと噴出した。 何を1人で百面相をしているのか? ペンをペン挿しに置いて、手のひらをガッツの頬に押し付ける。 顔が赤いので熱でもあるのかと揶揄ってみると、余計に赤くなった。 そのまま手のひらを滑らせて、わざと指先を唇にかすらせた。 わずかに走った動揺が可笑しい。 「あと少しで、終わるから・・・・」 吐息せささやくと、ガッツの大きな手がグリフィスの手を掴む。 今はまだ清らかな手に、口付けを送るために。
END
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