88888番キリ番ゲッター ヒトミ 様リクエスト 十二国記 尚隆×六太 |
(2)
高柳 悠
遠くにあった暖かい光が段々と近づいてくる。 ぼんやりとした意識はそれを、鈍いながらも捕らえていた。 氷枕は六太が発する熱ですぐにぬるくなってしまう。解けた水を撓ませて、扉の方を見る。 目を開けているのも疲れる。 すぐに閉じようとする瞼を何とか押し上げて、見つめ続けていると、かすかな音がして扉が開いた。 衝立が姿を隠しているが、明るい光だ。 光の正体を瞳が捉えたとき、何だかほっとして泣きたくなった。 「・・・・起きていたのか」 尚隆は少し驚いたようだった。 六太が寝ていると思ったのだろう。 牀榻の端に腰を下ろして、六太の顔を覗き込む。 その間、六太の瞳はずっと尚隆を追っていた。 「大丈夫か?」 大きな手で火照った頬を撫でる。 熱を確かめるように、そのまま額に手を滑らせた。 「熱いな・・・・」 額には角があるので、濡らした布を置いておくことは出来ない。 尚隆もあまり長く額に手をやることはせず、そのかわり、頬を何度も撫でて熱がどのくらいなのか、確かめる。 ふつふつと、汗が伝う。 氷枕をしている項に手を入れてみると、すでにぬるくなって冷たさはなく、六太の熱さが伝わるばかりだ。 頭を抱えて、枕を取り出すと、隣の部屋にいる女官に新しいものを用意するよう言いつける。 ついでに冷たい水と手ぬぐいと着替えの用意も。 すぐに用意されたそれらを女官から受け取り、手伝おうとする彼女達を追い出して、尚隆自ら看病しはじめた。 冷たい氷枕に換えてやると、ほっとしたように六太が息をつく。 寝かしたまま、汗で濡れた寝巻きを剥いで、固く絞った手ぬぐいで、汗を拭う。 「大人しいな」 普段だったらぎゃーぎゃー文句を言いそうだが、されるがまま大人しくしている六太に尚隆はやゆる。 身体を預けきっている六太は、やはり何時もと違い、やるられても騒ぐこともせずに、そのかわりに、ぴったりと尚隆にひっつく。 いつも尚隆より六太の体温は暖かいが、今日は熱いほどの熱を放っている。 ・・・・・・勿体無い。 ふと、そう思ったが、くっ付きたがる子供をあやして、汗を拭い、新しい寝巻きを着せてやり、また寝かしつける。 拭いてやったため、さらりとした額を撫でて、両頬を両手で包み込む。 屈みこんでそっと額と額をくっつける。 額からも、手のひらからも熱が伝わってくる。 「六太、早く良くなれ」 ささやいて、身体を起こすと、六太の瞳がふにゃっと歪んだ気がした。 「・・・・・ここにいるから、寝ろ」 行っちゃうの?と訴える瞳に、安心させるように笑いかけ、六太の隣に寝転がる。 幼子をあやすように、衾褥の上からぽんぽんと叩いてやると、ようやく安心したのか目を閉じた。 すぐに、いつもより浅くて荒い寝息が聞こえてくる。 それでも、自分がいた時よりも、安らかな寝息なのだろうと、尚隆は自負しているのだ。
END |
あんまり甘くない・・・・すいません