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十二国記 尚隆×六太

(2)

高柳 悠    

 

遠くにあった暖かい光が段々と近づいてくる。

ぼんやりとした意識はそれを、鈍いながらも捕らえていた。

氷枕は六太が発する熱ですぐにぬるくなってしまう。解けた水を撓ませて、扉の方を見る。

目を開けているのも疲れる。

すぐに閉じようとする瞼を何とか押し上げて、見つめ続けていると、かすかな音がして扉が開いた。

衝立が姿を隠しているが、明るい光だ。

光の正体を瞳が捉えたとき、何だかほっとして泣きたくなった。

「・・・・起きていたのか」

尚隆は少し驚いたようだった。

六太が寝ていると思ったのだろう。

牀榻の端に腰を下ろして、六太の顔を覗き込む。

その間、六太の瞳はずっと尚隆を追っていた。

「大丈夫か?」

大きな手で火照った頬を撫でる。

熱を確かめるように、そのまま額に手を滑らせた。

「熱いな・・・・」

額には角があるので、濡らした布を置いておくことは出来ない。

尚隆もあまり長く額に手をやることはせず、そのかわり、頬を何度も撫でて熱がどのくらいなのか、確かめる。

ふつふつと、汗が伝う。

氷枕をしている項に手を入れてみると、すでにぬるくなって冷たさはなく、六太の熱さが伝わるばかりだ。

頭を抱えて、枕を取り出すと、隣の部屋にいる女官に新しいものを用意するよう言いつける。

ついでに冷たい水と手ぬぐいと着替えの用意も。

すぐに用意されたそれらを女官から受け取り、手伝おうとする彼女達を追い出して、尚隆自ら看病しはじめた。

冷たい氷枕に換えてやると、ほっとしたように六太が息をつく。

寝かしたまま、汗で濡れた寝巻きを剥いで、固く絞った手ぬぐいで、汗を拭う。

「大人しいな」

普段だったらぎゃーぎゃー文句を言いそうだが、されるがまま大人しくしている六太に尚隆はやゆる。

身体を預けきっている六太は、やはり何時もと違い、やるられても騒ぐこともせずに、そのかわりに、ぴったりと尚隆にひっつく。

いつも尚隆より六太の体温は暖かいが、今日は熱いほどの熱を放っている。

・・・・・・勿体無い。

ふと、そう思ったが、くっ付きたがる子供をあやして、汗を拭い、新しい寝巻きを着せてやり、また寝かしつける。

拭いてやったため、さらりとした額を撫でて、両頬を両手で包み込む。

屈みこんでそっと額と額をくっつける。

額からも、手のひらからも熱が伝わってくる。

「六太、早く良くなれ」

ささやいて、身体を起こすと、六太の瞳がふにゃっと歪んだ気がした。

「・・・・・ここにいるから、寝ろ」

行っちゃうの?と訴える瞳に、安心させるように笑いかけ、六太の隣に寝転がる。

幼子をあやすように、衾褥の上からぽんぽんと叩いてやると、ようやく安心したのか目を閉じた。

すぐに、いつもより浅くて荒い寝息が聞こえてくる。

それでも、自分がいた時よりも、安らかな寝息なのだろうと、尚隆は自負しているのだ。

 

 

END

 

あんまり甘くない・・・・すいません