56000番キリ番ゲッター 八坂深果 様リクエスト テニスの王子様 跡部×忍足 |
高柳 悠
「ゆーし、帰りにアイスクリーム食べて帰ろうぜ」 下から見上げて、にかっと笑うのは忍足とダブルスのパートナーを組んでいる日向岳人だ。 元気の塊みたいに身体が動くと赤毛がつられて揺れる様を、忍足は眺める。 なっ、と小首をかしげる様が小動物を思わせる。 可愛らしい仕草だが、その瞳は心配そうで、不安が見え隠れしていた。 岳人は帝氷学園テニス部でもマスコット的存在で、子ども扱いされている。 自分もダブルスパートナーとして、随分面倒を見てきたものだ。 その岳人にまで心配されてしまうということは、そんなに自分は呆けているのだろうか? 今は全国大会も終わり、秋の新人戦までには遠い中途半端な時期で、しかも新部長となった跡部景吾は選抜選手に選ばれて部活に参加していない。 そのため、残された部員達は割合のんびりした時間をすごしていた。 そんな中、忍足だけ元気がない。 他の部員に悟られるような真似はしないが、側にい岳人をはじめレギュラー達には分かるようで、たぶん岳人は代表で誘いに来たのだろう。 忍足は、じっと見つめてくる岳人に笑いかけてやると 「ええよ」 と頷いた。 途端ににぱっと笑う顔がまだ幼くて、おかっぱの頭をぐりぐり撫でてやる。 「はぎのすけー、ゆーし行くってー」 乱暴な扱いから逃れて、部室の外で待っているらしい仲間に嬉しそうに声をかける。 滝の穏やかな声が、岳人に語りかけるのが聞こえてくる。 宍戸や他のレギュラーの声も聞こえてきて、随分心配をかけてしまったと少し反省し、ふいに感じた暖かさに気分が少し上向いた。 「駅前に美味しいジェラートの店が出来たんだ」 滝の制服の端を掴んだまま、岳人が、行くぞー、と先に歩き始める。 岳人に引かれるように滝が歩き始め、ぞろぞろと集団が動いた。 他愛無い話をしながら校門を抜け、駅までの道をそぞろ歩く。 駅まで10分ほどの道のりは、整地された歩道が続きおしゃべりしながらでも割と安全に行くことが出来る。 そんな道を半分ほど過ぎたところで、彼らの横にすっと黒塗りの高級車が止まった。 高級車など見慣れている彼らは驚きはしないが、その車には見覚えがあった。 白手袋の運転手にも見覚えがある。 止まった車の後部座席の窓がすっとさがり、スモークがかかっていた後部座席が見渡せるようになる。 乗っていたのは、選抜合宿に参加していた新部長で、黒塗りの後部座席が嫌に似合っている。 「・・・跡部」 呟いたのは、忍足だった。 「乗れ」 跡部は他のメンバーには見向きもしないで、忍足に短く命令する。 動いたのは忍足ではなく、岳人だった。 「ゆーしは俺達とアイスクリームを食べに行くんだっ」 「ああぁん?」 ずっと後部座席の窓に顔を寄せて、むっとした表情を隠さない。 泣く子も黙る新部長の睨みも岳人には、まったく通じない。 岳人はもっとずずいと顔を近づけると、跡部にしか聞こえないくらい小さな声で囁く。 「ゆーしは跡部が合宿に参加していて、ずっと元気がなかったから、泣かせたらショーチしないからなっ」 行儀悪くピッと中指を立てて威嚇すると、身軽に身を翻して忍足の側に駆け寄る。 「アイスクリームは、今度な」 そう言って、ぐっと背中を押して車の側まで連れて行く。 「岳人」 「ゆーしが元気ないと、俺もイヤ」 車の中に押し込んで、さっさとドアを閉める。 閉める前に跡部にもう一度威嚇することは忘れなかった。 むっとしたようだったから、アッカンベーをして滝の後ろに逃げ込んでおく。 走り出した車を見送って、残されたものだけでアイスクリームを堪能するために歩き始める。
明日からは、また全国を目指す日々がやってくる。
END |
岳人が主役?
・・・・・・・・・私、忍足×岳人なんだよねー
ごめん