44444番キリ番ゲッター 行雲 様リクエスト 十二国記 尚隆×六太 |
高柳 悠
「六太が落ち込んでるって?」 尚隆は執務室で回ってくる大量の書類を裁きながら、側で補佐している朱衡の報告に耳を傾けた。 「はい。何だかしょんぼりしていると台輔付きの官が心配して私の元に・・・」 言いながら、尚隆が署名して決済されていく書類の内容を確認し振り分けていく手は休めない。 「拾い食いでもして、腹痛でも起こしてるんじゃないか?」 「確認しましたが、朝餉はお召し上がりになったそうです」 「ほぉ・・・・じゃ、何だろうな」 「主上、手を休めないでください。・・・・今、惟端が様子を見に行って降りますので、時機戻ってくるでしょう」 ほらほら、と書類への署名を即し、印を押せをせっつく。 「過保護だなぁ」 「貴方ほどじゃありませんよ。・・・・主上、印をお忘れです」 印漏れの書類を尚隆の前に戻して、押韻欄を指差す。 慣れた手つきで印を押すと、さっさとそれを引き下げて、書面を上げてきた各所への返却するための箱に放り込む。 多すぎる書類にげんなりしながらも、やらなければ開放されないため、尚隆は筆を手にとって署名にせいを出すしかない。 惟端が戻ってくればちょっと休めるかな、と淡い期待を持ったところで惟端が執務室に入ってきた。 「惟端、どうでしたか?」 朱衡が聞くと、うーんと首をひねる惟端がいる。 「何だ?」 「原因は言わないので理由までは・・・・。元気がないのは確かだが・・・・」 大丈夫とちょっと笑って、大人しく仕事をしているらしい。 「大人しく仕事・・・」 「大人しく仕事ですか・・・・」 それは変、と尚隆も朱衡も惟端も思う。 「何だろうな?・・・拾い食いじゃないとすると、散歩していて何かの遺体を見つけたとか」 「ありえますね。先日庭の大牡丹が落ちたのを残念がっていましたが」 「関弓で仲のいい親子を目にしたとかじゃないか。台輔は結構寂しがりやだから」 「ああ、六太は結構親にこだわり持っているなぁ」 三人で額つき合わせている周りで、下官が各所からの書類を持って行ったりきたりしている。 持って帰る書類より持ってくる方が多いので、積み上がっていくそれに六太の件は保留となった。 尚隆曰く、そのうち動きがあるんじゃないか、とのことだった。
その動きがあったのは午後に入ってからで、一休みの後、午後の政務を始めてしばたくした時、開け放したままとなっている執務室の扉の隅に金色の頭が覗いたのだ。 朱衡はおやおや、と思いながら六太を招き入れる。 普段ならずかずか入ってくるのに、何故か塞ぎこんで他人の手を必要としている時に限って六太は遠慮するのだ。 どうしたのか、とは聞かずに椅子を用意してお茶を入れますね、と座らせる。 が、六太は座らずに、上目使いに尚隆を見つめたままだった。 迷うように揺れる瞳に見つめられて、尚隆はわざと放っておいた。 やがてどうするか決めたのか、尚隆の側に近寄ると椅子を引く。 尚隆が座っている椅子は代々の王が使用してきた重厚なもので、そこに座っている尚隆の体重を加えるとかなりの重さがあり、もちろん六太一人ではびくともしない。 六太の真意は分からないが、尚隆は身体を少し浮かせて椅子を後ろに引いてやった。 どうするのかと見つめる諸官の前で、六太は尚隆の膝の上によじ登る。 椅子を引いたおかげで出来た少しの隙間に身体を入れると、膝の上に向かい合わせで腰を下ろしてしまった。 そして、胸に顔をうずめて目を閉じる。 とっぴな行動に身動きが取れなくなった諸官が動きを取り戻したのは、尚隆が先に動いたからだ。 寄せられた身体を救い上げて、座りやすく整えてやると、背を叩いて居場所を作ってやったのだ。 目を閉じたまま神経をこわばらせていた身体から、力が抜けた。 尚隆は知らぬふりで、書類に目を通し、署名をし、捺印をする。 回りも何事もなく仕事に戻った。 とにかく尚隆に任せておけば、大丈夫。
明日には笑ってくれることを信じて。
END |
落ち込み編・・・第二段・・・?
あんまりラブラブしなかった・・・・ごめん(汗)