3000番キリ番ゲッター いたいたこ 様リクエスト
封殺鬼 聖×眞巳 |
高柳 悠
床から上半身を起こした状態で、眞巳はばたばたと立ち回る戸倉聖を無表情で眺めていた。 無表情というよりは、どういう表情をしていいのか、眞巳には分からなかっただけだったのだが・・・・・・。 昨日の天狗の襲撃によって寝付けたのは夜明けに近かった。しかも肩の火傷からは発熱を伴う痛みが続いている。 回復をはかろうとする体の欲求通り、眠りに落ちていた所を叩き起こされた。 ・・・・・・きっと聖にはその自覚がない。 「おはよーさん!三吾は昆に付き添って病院にいってるから、俺が頼まれて朝ご飯作ってきたでー」 と、元気よく突入してきて、ばたばたと雨戸を開け放ち、何時見つけたのが押入れの奥に入っていた折畳式の小さなテーブルを眞巳の布団の上にどっかりと置いて、その上に運んできた土鍋をどんっと置いた。 かっぱっと開けた蓋から開放されたあったかい湯気達が、いい匂いとともに部屋に充満する。 「釜戸でことこと煮たお粥さんや。めっちゃ美味いでぇ」 お粥と聖を交互に見て、眞巳はどうしようかと思案した。 聖を見ると、にっこりと満面の笑みを浮かべている。使役鬼との接触はなるべく避けたいが、ここで断るのも非礼にあたる気がする。 結局、眞巳はご相伴になることにして、利き手が上手く使えなくても食べやすいように、と用意されたれんげを左手に持った。 ゆっくりとすくって口に運んだそれは本当に美味しくて、その旨を伝えると聖は当たり前や、とふんぞり返った。 左手なので、だいぶ時間がかかったが綺麗に食べた眞巳は軽くてをあわせて「ご馳走様でした」と頭を下げる。 その姿をみて、聖は笑った。 「行儀がええなー、とても三吾のアニキにはみえへんわ」 でも、似とるなぁ、続ける。 土鍋を片して、テーブルをたたんで元の場所へ戻しながら、笑った聖に不信な目を向けた眞巳に笑った理由を話す。 がつがつ食べる三吾とは似ても似つかないが、食べ終わった時の動作がそっくりで、兄弟だと納得できる。 「あんたら、ちゃんと繋がってるんやなぁ」 食後のお茶を手渡して、聖は眞巳の側にあぐらをかいて座る。自分の手の中の湯飲みからずずっとお茶をすすって眞巳を見た。 聖の目から見た眞巳には、眞巳なりの戸惑いが感じられた。三吾が眞巳の話題に一喜一憂するのと同じで、眞巳も三吾のことでは悩んでいるのだろう。 なんといっても放蕩弟だ。 湯のみを両手で包んで、弄んでいる。 「三吾は、あんたのことで青くなったり赤くなったり、落ち込んだり熱くなったり、そらもう大変や。いろんなことがあったのかもしれへんけど、アニキのとこでそんなに騒ぐな、とかよー思ったわ」 からから笑う聖に眞巳はきつい瞳を向ける。そんな弱い姿を三吾はこの鬼に曝したというのだろうか? 「おっかない顔したらあかんで。せっかく美人なんやから」 「何を言っている」 からかわれている気がして、むっとした。だからといって無闇に表情にだす眞巳ですはないので、余計に無表情になる。 「ほめとるんやから、怒るなや」 腐っても千年を生きていた鬼には、そんな小細工は通用しない。眞巳の気持ちを直感で察しているようだ。 実際、眞巳のようなタイプは本家には多い。弓生が主に連絡役をしてきたとはいえ、生きてきた時間だけ聖にだって本家との深いかかわりがある。もしかしたら三吾より分かりやすい。
「あんたみないな、別嬪さんはあんまり記憶にないなぁ。いやーもう、三吾があないに騒いどるから、どんなアニキかと思えば、超美人やから、びっくりしたわ」 勝手に話している聖に困惑を深めて無表情になっていく眞巳は、口を挟む暇が無い。 「これやったら7年もひきずってもしゃぁないな。あいつ女の影があんま無いから大丈夫かと心配してたんやけどな、基準がこれじゃ仕方あらへん。生半可な女じゃ太刀打ちでけへんもん」 ずずっと、お茶をすする。 「いつやったかなぁ?あんた三吾の所に電話したことあるやろ。そんすぐ後でたまたま三吾に家に行ったんだけど、もうめちゃめちゃ荒れてて。打たれ強い奴なのに何かと思うたら、アニキから電話があったって言うんや。それからずっと三吾を一言で打ちのめすアニキに会ってみたいと思ってたんや、俺。あ、お茶お代わりいれよか?」 「・・・・・いや、いい」 「そうか?まあ、拝めてよかったわ」 持ち込んでいたポットからお湯を出して、自分の分のお代わりを注ぐ。一口飲んでほっと息を吐き出すと 「これからもよろしゅうな、お兄さん」 にっかりと笑った。 「・・・・・御景は鬼使いではない。他家に詮索されるような行動はお断りする。今後は三吾との接触も出来るだけ避けていただきたい」 何がよろしゅうなのか全く分からないが、三吾にも忠告をしようと思っていたことを先に鬼の方へ伝えておくことにした。 これが、この鬼に通用するかは問題だと思うが。 「かたっ苦しいやっちゃなー。気にせんでもええよ、それに俺は達彦とは気が合わんし」 「そういう問題ではない」 「ああ、もうええって」 ひょいと湯飲みを取り上げて、眞巳の体を布団の上に転がす。ちゃんと肩の怪我は考慮にいれて、そのへんはやんわりと行った。 「酒呑童子!」 肩まで引き上げられた布団を掻き分けて、上から覗き込んでいる聖を見上げる。 「まだちょっと熱あるみたいやし、ご飯ちゃんと食べて後は寝るのが一番や」 額に手をおき、その額が少し汗ばんでいるのに聖は眉根を寄せる。まあ、微熱程度だし、基礎体力があれば大丈夫だろう。 「人の話を聞け、酒呑童子」 聖が上に乗っている形なので、上手く動けない眞巳はきつい目で見上げいてくる。 その目が熱の所為か、少しだけ潤んでいるようで、聖の優しさを誘う。 「寝ぇや」 静かな声音で、聖がささやく。 騒がしい面ばかり見せていた聖の内面を見せられたようで、眞巳は言葉も無く見上げるしかない。 聖は小さい子にするように、ゆっくりと額をかきあげて、ぽつんと洩らした。 「桐子がゆうてた。どんなこと言われても、桐子はお兄さんが好きやったって」 「・・・・・・酒呑童子」 しばらく、お互いを見つめていたが、不意に眞巳が反応した。 聖の瞳の奥に何かの光を見た気がしたのだ。あれはずっと昔に見た記憶がある輝きだった。
だが眞巳の反応より妖である聖の行動の方が、何倍も早かった。 掠め取るようなキスは一瞬のことではあったけれど、衝撃は大きい。 言葉も出ない眞巳に不器用なウインクをかまして 「戸倉聖や。今度おうたら、そう呼んでなっ」 と朗らかに、聖は部屋を出て行った。
END |
何と言うか・・・・
HPで小説を載せる時
基本的に書いたものに言訳みたいな後書は書かない
と決めていたんですが・・・・・・
ごめんさない、とだけは言わせて
聖の言葉使いは難しい
こんなに何度も書き直したのは初めてかも・・・・・
とにかく難しかったです
いたいたこ様・・・こんなのですいません
いつか聖×眞巳でリベンジかましていいですか?